地域連携・教育ユニット研究会 2019年度第2回を開催

2019年11月29日(金)、地域連携・教育ユニット第3回研究会を広島県立文書館で開催しました。


 近年の資料保存では、地域社会の歴史文化的多様性を象徴する歴史文化資料を保存・継承する取り組みが注目されています。特に、多発する自然災害からの救済活動に焦点があてられ、被災した資料の救済や一時保管を中心に議論が展開しています。


 災害対策としての資料保存では、主に民間所在の歴史文化資料が膨大に確認され、これまでにも「資料ネット」などのボランティア活動によって迅速な対応が進められました。反面、津波や豪雨によって被災した資料は、本来の資料情報を復旧する上で多くの課題を抱えており、2018年に西日本地域に被害をおよぼした西日本豪雨でも、救済された多くの資料に深刻な被害痕跡を残し、歴史文化的意義を再確認するために多角的な分析と連携が求められます。

 資料保存の実践的取り組みとして救済活動が展開するなか、今後課題となるのは被災資料を安定的に保存し、より多くの歴史文化情報を復旧する保存科学・修復的アプローチと、救済された資料から被災地域の歴史文化を再発見し、新たな地域社会像を提起する歴史文化的アプローチであり、双方が地域社会と協働して歴史文化継承資料保存と継承のあり方を議論する必要があります。

 そこで本研究会では、災害対策をとりまく実践の経過を踏まえ、地域が災害から復興する過程における歴史実践の課題を検討し、地域を軸とした分野横断的な資料保存の展望と新たな地域連携の可能性を議論しました。

 下向井報告では、西日本豪雨により被災した文書群の救済に向けた広島県立文書館の取り組みを紹介し、対応過程で広がりゆくボランティア活動の展望が示されました。
 山口報告は、文化財修理技術者としての立場から災害対策への関わり方について、専門家として災害対策を進めていく上での課題と展望について検討しました。
 添田報告では、2015年に茨城県を襲った関東・東北豪雨での経験を踏まえ、被災資料を地域での文化資源として再定義していく取り組みとその意義について報告されました。
 最後に天野報告で、これまで進められてきた災害対策としての資料保存について、救済から修理、継承という一連の経過を連関的に捉えていく考え方が提起されました。その後、広島における取り組みを軸として総合討論が行われ、緊急的な対応を終えた被災資料を今後どのようなかたちで地域に還元し、地域を物語る資料として位置づけることができるのか、多方面からの議論が行われました。

 なお、研究会前日には、広島県立文書館が実施する被災資料クリーニングに参加してボランティアとともに作業を行い、地域に応じた保存・継承のあり方について考える機会を得ることができました。 快く受け入れてくださった 広島県立文書館のみなさま、ボランティアの方々に、改めて御礼申し上げます。

【日時】 2019年11月29日[土] 13:00-17:00
【会場】広島県立文書館
共催:広島歴史資料ネットワーク
協力:広島県立文書館

【プログラム】
13:00 開会挨拶 久留島浩(国立歴史民俗博物館)
         平岡典昭(広島県立文書館)
13:10~13:15 趣旨説明 天野真志(国立歴史民俗博物館)
13:15~13:45 下向井祐子(広島県立文書館) 
      「広島県立文書館における被災文書への対処とボランティアとの協働」
13:45~14:15 山口悟史(東京大学史料編纂所) 
      「被災資料に対する文化財修理技術者の役割~和本を中心に~」
14:40~15:20 添田仁(茨城大学) 
      「水損した資料は被災地の文化資源になりうるか―2015年関東・東北豪雨の実践から」
15:20~15:50 天野真志(国立歴史民俗博物館)
      「資料保存と救済・修理・継承」
15:50~16:50 討論 下向井祐子・山口悟史・添田仁(司会:天野真志)
16:50~17:00 総括 西谷大(国立歴史民俗博物館)
17:00 閉会

添田氏による報告
討論のようす
被災史料クリーニング作業のようす