第24回情報知識学フォーラムで研究報告

 2019年11月23日(土)、 第24回情報知識学フォーラム「地域資料とオープンサイエンス~地域資料の継承と情報資源化~」 (於:金沢市)にて、khirinを含む、地域資料の保全とデータ化に関する研究報告を行いました。

 研究報告の内容は、特に地域の歴史文化資料のデータ化とオープン化についての検討事例についてが中心でした。地域の歴史文化資料をどのように長期的に保存し、未来に長く伝えていくのか。それを支える情報技術について検討を行うとともに、デジタルデータそのものの長期的な維持と実物の関係について、実際のシステムに言及しつついくつかの課題提起を行いました。

 現在、総合資料学・歴史文化資料保全ネットワーク事業など、歴史文化資料の危機的な状況に対応すべく、いくつかのプロジェクトが並行して進みつつありますが、これらのプロジェクトの鍵の一つと目されているのが、これらのデータ整備です。とりわけ、地域資料のデータプラットフォームの構築とその活用は、歴史文化資料の現状把握と緊急時対応、そして地域における資料活用への可能性という観点からの期待を大きく受けていると言えるでしょう。

 報告の中では、データプラットフォームを構築する中で、資料を多く(様々な課題に配慮しつつ)人の目に触れさせることで守ることができるということや、データと現物の長期保全の関係性、データプラットフォームの構築時の課題などについて触れました。データや資料の保全は、地域や資料保存機関の現状に即した形で構築しなければなりません。単一の「正解」を求めるようなあり方は、どこかで問題を生じさせてしまいます。とはいえ、一方で全てを個別事例としてしまうと、実務担当者のコストが膨大になってしまいます。

 そこで、発表においては、資料の保全体制・データ保全のための管理と運用体制などの体制ごとの問題、博物館と自治体・図書館などの資料保全の機関ごとなど、いくつかのサンプル的なケースを作り、それらのケースに即した形で、課題を整理するモデルを提案しました。

 これらの研究報告を踏まえ、他の報告とともに総合討論が行われました。総合討論では、オープンデータが資料保全に果たす役割とその課題、地域資料保全と活用をどのように進めていくのかなどの検討が行われました。本発表は、5月に実施されたオープンサイエンスサミットの継続的なものという側面もあり、特に情報学の関係者にも地域資料の重要性などを認識してもらう、重要な機会となったのではないかと考えています。