2018年5月28日

聆涛閣集古帖について

『聆涛閣集古帖(れいとうかくしゅうこちょう)』とは、摂津国菟原郡住吉村呉田(現在の兵庫県神戸市の東部)の江戸時代の豪商・吉田家により編纂された古器物類聚の模写図譜です。吉田家は豊かな財力を背景に、江戸時代の後期(18世紀後半)から明治初年(19世紀後半)にかけて、三代・約100年間にわたって、当時の学者や貴族たちとの交流を通じ、多くの古文書や古物を収集して、この『集古帖』を編集しました。

『集古帖』は、さまざまな古い器物を「天地・尺量・升量・扁額・文房・肖像・書・碑銘・墓誌・鐘銘・雑銘・甲冑軍営・弓矢・刀剣・鋒・馬具・楽器・印章・鏡・織紋・乗輿・玉・食器・食品・葬具・調度・嚢匣・瓦・鈴鐸・戯器・仏具・雑」の分類の下、全46帖に総計約2,400件を収録するとともに、他に20点ほどの肖像画・絵図の未表装模写が付属しています。物質資料や文献資料の精巧な模写・拓本、古印の模写・模刻、あるいは古い絵画からの抜き描きに、簡単な注記・解説を記す体裁となっており、写された対象は、人間の過去の痕跡、すなわち歴史に関する広い領域に及んでいます。『集古帖』をめぐる「集め、写し、伝える」活動は歴史系博物館の基本的な構成要素を備え、さながら前近代における「総合資料学」の様相を呈していると言えるでしょう。

現在、国立歴史民俗博物館では、この『集古帖』を集中して検討する共同研究「『聆涛閣集古帖』の総合資料学的研究」を実施しています。この共同研究にあわせ、総合資料学の創成事業の一環として、本画像をIIIF(khirin-i)にて公開いたします。また、これらの画像の検索のために、検索用目録をLinked Data版の共同利用基盤(khirin-ld)にて公開いたします。検索用目録は、あくまでも画像発見用のものとして作成している暫定版です。内容については、今後変更される余地があることはご注意ください。より詳細な目録は、現在の共同研究で作成しており、その成果の一つとして、出していく予定です。

また、これらの画像および目録は「CC BY 4.0 国際」に準拠する形で公開をしております。詳細は「khirinについて」をご確認ください。