2017年10月9日 「山形民俗映像フォーラム・黒川能(王祇祭)1954年/2006年」を開催


2017年10月9日(月・祝)、山形大学附属博物館が中核館となって組織する山形文化遺産活用事業実行委員会とともに、「山形の文化遺産を世界に発信するプロジェクト」の一環として、「山形民俗映像フォーラム・黒川能(王祇祭)1954年/2006年」を開催しました。

黒川能は、春日神社の王祇祭などの神事で奉納される、山形を代表する民俗芸能です。今回のフォーラムでは、1954年撮影の「王祇祭」(日本大学芸術学部映画学科製作、山形県教育センター蔵)と、2006年撮影の「王祇祭」(内田長志撮影・編集、国立歴史民俗博物館蔵)のふたつの映像を上映し、その後のトークセッションにおいて、学術資料として分析・研究する論点を映像からどのように引き出せるか試みました。

1954年撮影の「王祇祭」は、(株)東京光音の協力により、16ミリフィルムを4Kスキャンしたデジタルリマスター版で上映しました。人びとが身につけている衣服の模様や、背景に写り込んでいる文字などが、よりくっきりと見えるようになり、1954年の王祇祭の現場の情報がより豊かに得られることがわかりました。2006年との比較では、環境や気候の変化、子どもの減少、王祇祭に参加する人びとの様子の変化など、興味深い論点が導き出されました。

1954年撮影の「王祇祭」の冒頭には、「王祇祭編 真壁仁著 ”黒川能”より」というタイトルが挿入されています。質疑応答では、山形を代表する詩人である真壁仁がこの映画の製作にどのように関わっていたのか、という質問がありました。黒川能についての研究は、真壁の『黒川能』(1953年)が世に出るまで質量ともに乏しく、同書中に「映画や音盤などにも記録してゆかなければならない」とあることから(フォーラム開催後、村山民俗学会の大江良松氏よりご教示をいただきました)、本映画の制作に真壁がどのように関わっていたのか、民俗記録映画の制作論としても興味深い論点を提供する素材であることがわかりました。

日時:平成29年10月9日(月・祝) 10:30~11:50
会場:山形美術館2階(山形市)
主催:大学共同利用機関法人国立歴史民俗博物館・山形文化遺産活用事業実行委員会
協力:株式会社東京光音
トークセッション:市村幸夫(村山民俗学会)、岩鼻通明(山形大学農学部)、内田順子(国立歴史民俗博物館)、三上喜孝(国立歴史民俗博物館)
司会:佐藤 琴(山形大学)

上映中の様子

トークセッションの様子01

トークセッションの様子02
(右から岩鼻・市村・三上・内田)