2016年7月3日

総合資料学とは何か

「総合資料学」とは、主に大学や歴史系博物館が持つ資料を多様な形で分析・研究するための学問です。多様な「モノ」資料を時代・地域・分野等によって分類し、分野を超えた視点から統合的に分析することで、高度な共同利用・共同研究へと結びつけます。日本の歴史資料の活用による、人文学・自然科学・情報学の分野を超えた新たな日本史像の構築、学問領域の創成を目指しています。

総合資料学のリーフレット(PDF 2.4M)leaflet_ja_2

この「総合資料学の創成」のために、国立歴史民俗博物館では、メタ資料学研究センターというセンターを立ち上げ、さまざまな検討を進めています。

メタ資料学研究センターの研究組織

大学、あるいは歴史系博物館といえども、いわゆる歴史学・考古学だけの資料ではなく、多種多様な資料を抱えています。古文書や、考古遺物は無論のこと、自然科学にかかわる植物・昆虫標本など、さらには技術史にかかわる資料などを抱えていることも珍しくありません。また、大学博物館であれば、研究者の研究の過程で生まれてきたノートなどの中間生成物もあると思われます。これらは、人間の営みを示す基礎資料であり、過去を解き明かすための重要な資料であることは言うまでもありません。これらの多様な資源を用いることで、歴史研究を今まで以上に分野横断的なものとすることを目指しています。

また、単一の資料であっても、扱う研究分野により見方が異なります。このような「見方」の多様性について検討し、一つの資料を分野横断的に検討することも、一つの眼目としています。

例えば古文書であっても、その見方によって、多様な側面が浮かび上がります。
歴史学の営みに即してみれば、古文書はその内容もさることながら、誰から誰へ伝えられたのか、どのような文脈の中で出されたのかといった、物質としての文書を超えた、当時の複雑な時間的・空間的・社会的文脈の中に位置づけられることになるでしょう。
一方で、「古文書そのもの」に焦点をあててみると、例えば文書の書かれ方、文体などについて分析を加えることもあるでしょう。その場合には、歴史学だけではなく、その国の語学(史)を加味して検討することが必要です。
さらに要素を分解し、一文字単位になった場合には、語学研究の中でも、文字研究の分野の知見が求められます。当時、どのように文字が書かれたかというのは、当時の文化に加えて、社会的な文書の位置づけなどの検討に重要な示唆を与えることになるでしょう。
より細かい情報を見ていけば、(日本であれば)墨・紙などの情報にまでたどり着きます。これら墨・紙の材質を分析するためには、技術史的な視点を欠くことはできません。また、紙などの材料である植物の利用などに踏み込んでいけば、当時の自然環境を検討するための重要な材料ともなります。これらについては、自然科学との協業によって多くのことが明らかになります。

このように、古文書一つをとってみても、検討すべき要素は多種多様です。これらの諸要素すべての検討を、一つのディシプリンの中で行うことは困難です。そこで私たち歴博は、総合資料学の場を活かした多様な研究を試みています。

無論、これらの問題意識については、例えば日本のある地域を研究した「地域学」など、すでに先行事例があります。また、(学問分野としての)地域研究などの文脈においては、すでに開拓されている部分もあります。これら地域学・地域研究の枠組みに学びつつも、地域といった空間的切り口だけではなく、より多くの切り口で、これらの研究を行うことを目指しています。
また、当館では考古学、美術史などでも、自然科学的手法を多く取り入れています。これらの手法をより発展させることも、眼目の一つとなります。

総合資料学の研究プロジェクトは三つのワークショップにより構成されています。(それぞれをクリックすると、ワークショップの説明にとびます)
一つ目が、アクセス基盤構築のためのワークショップ
二つ目が、基盤を活用した文理融合型研究のワークショップ
三つめが、文理融合の研究成果を活用した地域での研究や教育を検討するワークショップです。

これらのワークショップが、それぞれ有機的に連結しつつ、一体となって研究を進めていきます。

上記のように、多様な切り口で、かつ資料を総合的に多様にみることで、新たな歴史像を作り出す、「場そのもの」を、私たちは「総合資料学」と位置付けています。