2020年度第1回 地域連携・教育ユニット研究会を開催

 2021年1月15日(金)、地域連携・教育ユニットを開催しました。

「災害の記録収集と展示」をテーマとした本研究会は、近年度重なる自然災害の発生や感染症の流行にともない広がりをみせる、新たな記録収集の取り組みに注目し、これらの活動と博物館活動とのあり方を検討することを目的に企画しました。

 1995年阪神・淡路大震災以降、「震災資料」、「災害資料」と呼ばれる記録の収集活動が各地で展開します。これらは、災害の経過で残された多様なモノを資料と位置づけて収集・保存し、災害の記憶を継承する営為ですが、各地での収集・保存に関する事例が蓄積されるなか、多様な資料を通していかなる災害像を形成するのか、さらには災害という断面をとおして地域社会をどのように見通していくのか、災害資料を通した歴史文化のあり方を提起することが求められています。特に、モノを通した発信として注目される展示活動において、災害資料の意味が検討される必要があります。

 研究会では、吉川報告で阪神・淡路大震災の災害資料について、その利活用に向けた実践が紹介されました。さらに、災害経験のない学生などが資料と向き合うことで災害像を紡ぎ出すことの意味が提起され、震災展示を制作する過程を含めた災害資料の意義が示されました。また、門馬報告は、2011年東日本大震災で被災した福島県富岡町の災害記憶の保存・継承について検討し、地域の歴史として災害の記憶を位置づけることの意味とその課題・展望が提示されました。作間報告では、新型コロナウイルス流行に対する記録収集の取り組みを報告し、那須歴史探訪館で進めているコロナ関連史料収集の現況を示した上で収集した資料の保存・継承に向けた課題が提示されました。

 その後3報告を踏まえて討論を行い、資料収集の期間やその活用・情報発信の展望など、多岐にわたる議論が行われました。今後も災害経験を踏まえた地域像のあり方について、引き続き議論を進めていきます。

【日時】2021年1月15日(金) 18:30-21:00
【会場】オンライン
【プログラム】

18:30-18:40趣旨説明 天野真志(国立歴史民俗博物館)
18:40-19:10報告1震災資料の利活用をめぐってー神戸での経験から-
 吉川圭太(神戸大学)
19:10-19:40報告2東日本大震災を地域の歴史に位置づける
 門馬健(福島県富岡町)
19:40-20:10報告3コロナ関連資料への注目と収集・展示
 作間亮哉(那須歴史探訪館)
20:10-20:20(休憩)
20:20-21:00討論 司会:天野真志(国立歴史民俗博物館)