「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」について

2017年度より、人間文化研究機構では「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」を推進しています。本事業は、各地域に伝来する多様な歴史文化資料の保全と継承を通した大学とのネットワーク構築を進めるものです。

本事業の背景にあるのは、地域の歴史文化資料に関して多様な活動を進めている「史料ネット」です。「史料ネット」は、1995年に発生した阪神・淡路大震災以後、主に個人宅に保管される歴史文化資料の保全と継承を目的に神戸市で発足しました。その後この活動は全国に波及し、現在に至るまで全国に24の「史料ネット」が設立されています。2011年の東日本大震災でも宮城や福島、茨城などで地域に根ざした精力的な活動を続けています。

大規模な自然災害が多発する近年、これまで以上に地域社会に伝来する歴史文化資料は危機的な状況に置かれます。特に、個人宅などに伝わる資料は、所在情報や内容が把握されていない場合がほとんどであり、次世代への継承を進めるうえで「史料ネット」のような取り組みに対する注目は高まっています。

「史料ネット」は対象地域の資料館・博物館、行政担当者、さらには市民の連携に基づいた活動に特徴がありますが、多くの「史料ネット」ではその拠点を大学に置いています。こうした取り組みは、地域の歴史文化保全における大学の役割という意味で象徴的です。地域社会の歴史文化を守り伝える担い手として、各地域における大学の役割が求められています。

地域社会における歴史文化継承の担い手たる大学の役割を支援すべく、本事業では全国で「史料ネット」活動を展開する各大学と連携し、地域社会に伝えられた歴史文化資料の保存・継承を通した歴史文化研究に取り組んで行きます。特に、神戸大学・東北大学と密に連携し、全国の大学を基盤としたネットワーク構築を目指します。

総合資料学では、この事業に対して密接に連携して地域社会の歴史文化に対する保全活動と地域研究を推進していきます。特に、災害時対策として求められる所在情報に関するデータ蓄積・利用のあり方や、緊急時の相互支援体制を想定したネットワーク構築など、各ユニットと協力して地域社会における歴史文化の継承と創成を目指していきます。