「学術野営 2021 in 奥州市リベンジ」を開催

 2021年7月2日(金)~4日(日)に「学術野営 2021 in 奥州市リベンジ」を開催しました。合同会社AMANEと共同で主催し3回目となる今回の学術野営は、奥州市教育委員会・えさし郷土文化館、大学共同利用機関法人 人間文化研究機構、挑戦的研究(萌芽)18K18525、基盤研究(B)20H01382、基盤研究(C)21K01073の共催で行いました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴いやむを得ずハイブリッド形式での開催となった昨年のリベンジとして、今年こそ奥州市での現地開催を実現させようと計画しましたが、今回も感染状況を考慮しハイブリッド形式での開催としました。

 イベントの計画に際しては、昨年までの課題として、話題提供と議論を同日に行うと議論の時間が十分に取れない、また、参加者としても話題提供から議論までに時間を置いた方が意見をまとめやすいのでは、という意見が上がっていました。したがって今回は、学術野営当日は議論の時間のみとし、その日までにプレイベント「火付けの会(火起こしの会)」と称する話題提供・論点整理のためのオンラインセッションをテーマ別に分けて数回行いました。それによって、当日はより論点を絞って議論を深めることを目指しました。

 議論のテーマとしては、「Ⅰ.国立歴史民俗博物館(総合資料学)提案:地域資料調査における研究者と地域社会とのコミュニケーション」、「Ⅱ.AMANE提案:学術研究活動の経済価値について」、「Ⅲ.地域関連提案:地域における資料継承の現実と展望〜民具資料の”緩やかな保存”の可能性」の3つを設定し、さらにIIのテーマに関連して、学術資料継承に関するワークショップ(オンライン)と氷河期世代オンライン同期会(同時開催:学術若手同期会)を学術野営の1日目に開催しました。プレイベントは、録画した動画等を可能な限り公開し、学術野営当日のみに参加する参加者も事前に議論の内容や流れを把握できるようにしました。

 テーマIとIIに関しては、今回の学術野営で新たに取り入れたテーマでしたが、火付けの会から様々な論点が出されました。テーマIでは、研究者側のふるまいに関する倫理綱領やルールの制定、教育機会の整備・充実化などの具体的な対策を視野に入れた意見・情報交換がなされ、地域との協働のあり方についてのこれまでの課題や今後考えるべき点について議論を進めました。テーマIIでは、学術資料継承に関するワークショップや氷河期世代オンラインの内容等も踏まえ、地域において歴史文化資料の調査や活用が今後も継続されるために、専門家による学術研究活動と、郷土史家やボランティアの活動との違いをどうとらえるか、専門的な活動の経済的価値をいかに社会に認知してもらい高めていくか等の議論が展開されました。テーマIIIでは、民具の「緩やかな保存」という新たな考え方を軸に、第一回目の学術野営から継続する議題である「資料のモノと情報について、何をどこまでどうやって残すのか」について議論がなされました。これは民具だけでなく古文書や考古遺物等地域にみられる様々な歴史文化資料に共通する課題であるため、今後も引き続き議論を深めていく必要があります。3つのテーマをまとめた全体討論においても、資料の保存や活用において、研究者の視点だけでなく地域の人々の多様な視点を取り入れていくことの重要性についてなど、活発な議論が行われました。

 今回のイベントでの論点や成果を踏まえ、今後も学術野営では、地域と連携し、多様な歴史文化資料や文化財を活用・継承していくための自由で活発な議論の場をつくっていきたいと考えています。また、これまでにハイブリッド形式で行ったイベント運営の経験を活かし、さらに多様な人々が参加できる場を目指します。

〔プレイベント「研究者セッション火付けの会」〕

研究者セッション火起こしの会
【第1回】YouTubeで動画公開
   司会:後藤真(国立歴史民俗博物館)
   話題提供:天野真志(国立歴史民俗博物館)、橋本雄太(国立歴史民俗博物館)
【第2回】 2021年6月30日(水)18時〜(オンライン)
   司会:後藤真(国立歴史民俗博物館)
お金セッション火付けの会
【第1回】 2021年5月26日(水)19時〜(オンライン)
   司会:合同会社AMANE
【第2回】 2021年6月22日(火)19時〜(オンライン)
   司会:合同会社AMANE
   話題提供:松岡誠一氏(仏像文化財修復工房)
地域関連セッション火付けの会
【第1回】2021年6月5日(土)15時~(オンライン)
   司会:川邊咲子(国立歴史民俗博物館)
   話題提供:原嶋亮輔(root design office)、ReBuilding Center Japan

「学術野営 2021 in 奥州市リベンジ」
日時:2021年7月2日(金)〜4日(日) 
会場:現地会場とオンラインのハイブリッド開催(現地会場:えさし郷土文化館)
内容・スケジュール

7月2日(金)
  16:00〜 学術資料継承に関するワークショップ:みんなであいみつ♡
  19:00〜 氷河期世代オンライン同期会(同時開催:学術若手同期会)
7月3日(土)昼間の部 13:00〜18:00 議論 
    司会:堀井洋(合同会社AMANE)・後藤真(国立歴史民俗博物館) 
Ⅰ.国立歴史民俗博物館(総合資料学)提案:地域資料調査における研究者と地域社会とのコミュニケーション
Ⅱ.AMANE提案:学術研究活動の経済価値について
Ⅲ.地域関連提案:地域における資料継承の現実と展望〜民具資料の”緩やかな保存”の可能性〜
7月3日(土)夜間の部 19:00〜  全体議論
7月4日(日)
  巡見:正法寺、牛の博物館など(現地参加者のみ、各自行動)
歴博会場の様子(えさし郷土文化館)
AMANE会場の様子(えさし郷土文化館)